音楽エッセイ|ルイジ・ボッケリーニ

ルイジ・ボッケリーニ(Ridolfo Luigi Boccherini,1743年2月19日 – 1805年5月28日,イタリア)

音楽史で、バロックから古典派への移行は、バッハが死亡した1750年を境にすることが一般的です。

まさにボッケリーニ古典派の先駆者と言って良い存在ですが、同時代に活躍したモーツアルトの影に隠れ、今ではあまり演奏会でも取りあげられることは少ないようです。

しかし、私にはモーツアルトと並んで魅力ある古典派作曲家の一人です。

ボッケリーニ、チェロを弾く肖像画(1764-1767)

バロックと古典派音楽の違いを一言で説明するのは大変難しいですが、私なりの解釈は、

どちらも音楽による感情表出という点では共通しているものの、バロック喜怒哀楽を喚起する調性をあまりに一般化・類型化してしまい、バロック時代の音楽はどれも同じように聴こえてしまうという特徴があるように思います。

600以上あるヴィヴァルディの協奏曲の違いを聴き分けることはとても難しいものです。

それに引き換え古典派時代の音楽は、時代が「わかりやすさ」、「快さ」を音楽に求めたということもありますが、音楽家自身が感動しなければ他人を感動させることができないということを自覚し、個性的・主観的な感情表出を心がけるようになった結果、多様で魅力ある作品、作曲家が生まれてきたところに特徴があるように思います。

ボッケリーニの作品の中でも私が特に好きなのは、弦楽五重奏(Op30-6)、弦楽六重奏(Op23-1)、弦楽八重奏(Op38-4)ですが、どれも弦楽合奏、長調という形式は共通なものの、各々が全く異なった「快さ」を感じさせてくれます。

あるフランスヴァイオリニストボッケリーニの音楽について次のようなことを言っています。

「神が音楽を通じて人に何かを語りかけたい時、彼はハイドンの交響曲を選ぶであろう。だが、神自身が音楽を楽しみたい時、彼が選ぶのは間違いなくボッケリーニだ」


>>教室TOP