音楽エッセイ|ベートーヴェンの交響曲は何番まである?

2020年に、ベートーヴェン生誕250周年を記念して、音楽之友社が「ベートーヴェン/好きな曲ランキング」と題して読者投票を実施しました。

結果、ベートーヴェンの全楽曲の中で圧倒的に1位になった曲は、交響曲第9番ニ短調「合唱付き」でした。2位に入った、交響曲第7番の倍近い投票数を集めたそうです。

また、ベスト10の中に、交響曲が5曲(上位順に、9番、7番、6番、5番、3番)も入っており、ベートーヴェン好きな人は、彼の交響曲を好んでいることが特徴としてみられます。

やはり「楽聖ベートーヴェン」ですから、重厚な交響曲こそがふさわしいと思うのでしょうか?(私が好きな曲は、後期の弦楽四重奏曲とか、最後の3つのピアノソナタですが、残念ながらいずれもベスト10には入っていませんでした)

ところで、ベートーヴェンの作曲した交響曲は、何曲あるかご存知ですか?

第1番から第9番までだから9曲と思っている方が多いかと思いますが、正解は10曲です。

確かに番号付きの交響曲は9番までの9曲ですが、実は交響曲第7番を作曲した後に、番号を付けない「戦争交響曲」という交響詩に近い交響曲をベートーヴェンは作曲しているのです。
(交響曲とは名付けられていますが、オーケストラのソナタとしての交響曲の概念に含まれるものではありませんから、正確に言えば交響詩というジャンルに位置づけられる作品と思います。従って交響曲全集などのCDにはほとんど収録されていません。念のため)

「戦争交響曲」(別名ウェリントンの勝利、1813年10月完成)は、1813年6月、全盛期の勢いを失いつつあったナポレオンがウェリントン侯爵率いるイギリス軍に敗北を喫したことを祝って、作曲されました。

何故、ベートーヴェンが、自分の国の戦争のことでもないのにこの曲を書いたのでしょうか?

出発点は、フランス革命までさかのぼります。もともとベートーヴェンは、1789年のフランス革命の理念である、「自由」、「平等」、「博愛」には深く共感していました。

そして、当時革命政府の軍司令官のナポレオンに対してもその体現者として、その活躍に感銘を受け、1803年に完成した自身の交響曲第3番を「ボナパルト」と題して、ナポレオンに献呈しようとしていました。

しかし、1804年にナポレオンが市民を裏切り、自らが皇帝の座に就くと知ると、ベートーヴェンは激怒し、献呈を止めてしまいました。

その後、ナポレンは侵略戦争をヨーロッパ全体に拡大し、ウィーンもナポレオン軍に占拠されたり、戦渦に巻き込まれる中で、ベートーヴェン自身益々ナポレオンに対する失望を強め、反ナポレオンの態度を明確に示すようになってきました。

そうした経緯の中での、1813年のナポレオン軍に対するイギリス軍の勝利ですから、これを祝って作曲することには何の違和感もなかったことでしょう。

曲中では、オーケストラにより、両軍の戦闘やイギリス軍の勝利が描写され、その派手な響きと内容と共に当時の聴衆の喝采を浴び、一躍人気曲になったと言われています。確かに描写音楽的であり解りやすいですが、今この曲が取り立てて評価されることはなく演奏される機会もほとんどないのが現状のようです。


(参考)「ベートーヴェン好きな曲ランキング」2020年音楽之友社

順位曲名投票数
1交響曲第9番「合唱付き」1102
2交響曲第7番639
3ピアノソナタ第8番「悲愴」524
4交響曲第6番「田園」520
5ピアノ協奏曲第5番「皇帝」460
6交響曲第5番「運命」457
7交響曲第3番「英雄」400
8ピアノソナタ第14番「月光」383
9ピアノソナタ第23番「熱情」283
10ヴァイオリン協奏曲281

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