こんにちは。主宰の木山舞子です。
木山音楽教室は、2歳からシニアまで幅広い年齢層の生徒さんに通っていただいていますが、今年に入り、私の担当生徒にピアノ初心者の幼児さんが一気に増えました。可愛い小さな子供達のレッスンは、こちらも本当に楽しいのですが、その後のベースをしっかり整えなくてはならないので、一回一回のレッスンに難しさと大きなやりがいを感じながら取り組んでいます。
私が特に初心者の生徒さんのレッスンで大切にしていることに、教室の指導の軸に揚げている、ソルフェージュの基礎力や、悪い癖をつけないためのテクニックの基礎作りはもちろんですが、「やればできる」の考え癖をつけるということがあります。
生徒の中には、新しい課題に取り組む前はいつも不安そうだったり、ナーバスになってしまうような子も少なくありません。「こんな難しいこと、出来るかなあ、出来ないよ〜」という生徒さんを「大丈夫!絶対にできる!」と励ます事、そして実際に出来るようにしてあげることは、ピアノ講師としてのみならず、子供と親しく接する大人の一人として、音楽のレッスンを越えたとても責任ある役割だと感じます。
ピアノの課題は常にステップアップが求められ、頑張っている生徒さんほど乗り越えるべき壁も多くなっていきます。私も子供のころ、毎週毎週のレッスンで出る課題に取り組みながら、「難しい!今度こそ本当に出来ないかもしれない…!」と何度思ったかしれません💦
しかし、取り組みはじめた時は「出来ないかもしれない」と不安だった事が、とりあえず始めてみると、次のレッスンが近づいてくるまでに「出来る」ようになる。
よかった!今回は何とかなったぞ!と一安心すると、また新たな課題が出て、再び「出来ないかもしれない…」となる。
でもまた、とにかく始めて、少しずつやっているうちに、「出来る」ようになる。
それを繰り返しているうちに、「大抵の壁はいつか必ず乗り越える事が出来る」ということ、そして、「これくらいの壁なら、どれくらいの努力をどれくらいの期間続ける事で乗り越える事が出来るぞ」と見通しをたてる、という事を学べたと思います。
そしてこれは、ピアノに関する面だけでなく、人生の全てにおいて大きな収穫となりました。

在仏中、まだ若い学生だった頃にピアノ指導を始めたとき、もちろん自分はそれまでの経験で培った「やればできる」のマインドでレッスンを開始したのですが、生徒さんの中には少なからず、いつも「自分には出来ない」「出来ないに決まっている」というところからスタートする方がいて、実は最初、驚きました。
どうしてまずやってみないんだろう、どうしてやる前から諦めてしまうんだろう、やったところで自分にはどうせ出来ないと決めつけてしまったら、練習も楽しくないんじゃないかな…
そうして、自分の幼少期の音楽レッスンを振り返った時に、この小さな壁を乗り越える経験を繰り返すという体験がいかに重要であったのか、実感しました。
ここで、「自己効力感」という言葉を思い浮かべることができます。これは、行動を起こす前に感じる「自分にはできそうだ」という感覚のことです。
自己効力感は、何か目標があるときにそのための行動を起こすきっかけになります。「やれば出来る、出来そう」と認知できれば行動を起こすことは容易くなります。逆に、「自分にはどうせできない」と思ってしまうと、行動におこせず、やる前からあきらめてしまいます。
自己効力感が高ければ、何か壁に直面した時にも、「やればできるはず」と信じて行動に移し、実際に達成した、という成功体験を積むことが出来ます。そしてこの経験が繰り返されるほど、自信がついて行きます。
音楽のレッスンは、まさにこの経験の繰り返しです。繰り返すほどに「やればできる」自分への信頼は強まっていきます。さらには、成長するに連れて課題が難しくなり、達成するまでにかかる労力や時間が増えていっても(小さな頃は1週間で1曲合格!花丸!となっていたものが、成長して長い曲に取り組むようになると何週間も、時には何ヶ月も同じ曲に取り組むことがあります!)、そこに至るまでに段階を経て成功体験を積んできたことで、今すぐに出来ないことでも、成功までの見通しをたてて粘り強く取り組み、いつかは達成することができるのです。

一方、そういった経験が少なく、自己効力感の低い人は、壁を目の前にしたときに、「自分にできるわけがない」と感じてしまいます。うまくできる自分の姿をイメージすることができないため、取り掛かることが出来ないのです。
レッスンをしていて、そういう生徒さんと接することは今でもたくさんあります。年齢が小さいなどでそもそもの経験が少なければ自然なことだと思いますし、中には、それ以前のレッスンでそのような考え癖がついてしまった生徒もいます。いずれの生徒に対しても、我々講師が、その子が少し頑張れば越えられる高さのハードルを上手に設定し、「あなたはできる、先生は知ってる」と励まし続けることが大切です。そしてクリア出来たらたくさん褒める。

こういった、成功体験を積ませる、さらに、その成功体験を何度も思い起こさせるようにして追体験させることで、本当にみるみる可能性が広がって、輝き、自分から「やってみる」「きっとできる」と言えるようになっていきます。
レッスンで生徒達と毎週顔を合わせていると、この自己効力感が高まった瞬間というものが訪れることがあり、こちらも雰囲気や表情の変化でハッと気が付きます。そこからの成長はそれ以前よりもめざましいものになるので、私としては、その生徒さんのこれからが楽しみでワクワクすると同時に、この子は大丈夫、自分で歩く力がついた、とほっとする瞬間でもあります。
しかし、設定するハードルの高さがその生徒の現時点での実力に対して高すぎると、全てが逆効果になりかねません。また、逆に課題が簡単すぎてもいけません。そして、励ましたり、成功を共に喜ぶ時にかける言葉には、常に愛がないと、生徒はせっかくの成功体験に疑問を持つかもしれません。そして厄介なことに、一度疑いが生まれて「自分は出来ない」となってしまうと、その疑いを取り除くところからスタートしなくてはならないので、最初の先生という存在は責任重大だと思います。
音楽のレッスンが、このように、音楽の技能を高めるためだけでなく、その生徒の人生全てに良い効果が期待できる反面、講師の裁量次第では全く異なるものになってしまう以上、何年指導を続けていても、いつも気を引き締めて取り組まなくてはならないと思います。

