「アントニン・レオポルト・ドヴォルザーク(Antonín Leopold Dvořák、1841年9月8日 – 1904年5月1日、チェコ・プラハ近郊生)」

以前このブログで「鉄オタだったドヴォルザーク」と題してドヴォルザークの人間像を紹介しましたので、今回のブログでは彼の音楽作品の紹介をしたいと思います。
ドヴォルザークの作品というと決まって、交響曲第9番ホ短調「新世界から」(Op.95)、弦楽四重奏曲第12番ヘ長調「アメリカ」(Op.96)、チェロ協奏曲ロ短調(Op.104)が挙げられます。
確かにどれも名曲と思いますが、ドヴォルザークは、音楽ジャンル毎に分業が進んだ後期ロマン派の作曲家に属するわりに、交響曲、協奏曲、室内楽曲、ピアノ曲、オペラ等々全ての音楽ジャンルに膨大な作品を残しており、まだまだ沢山の埋もれた名曲があります。
私も、ここで私の大好きな作品を紹介したいと思います。それは、1887年に作曲された、ピアノ五重奏曲第2番イ長調(Op.81)です。とにかく、親しみやすく美しいドヴォルザークの楽想が溢れており、聴いている私達を一瞬にして幸せな気分に包んでくれます。
この曲は4楽章型式で、第2楽章にスラヴの民謡であるドムカ形式、第3楽章にはボヘミアの民俗舞曲であるフリアント形式が採用され、ドヴォルザーク特有の民俗的、土俗的な香りは強いものの、両端の第1、第4楽章は古典的様式の強い曲調で構成されていますので、全体的には普遍的な音楽的感動を与えてくれます。よくドヴォルザークはチェコ国民学派の一人と紹介されますが、この曲を聴けば、その範囲にとどまらないグローバルな音楽家であることが実感されます。(これもドヴォルザークがグローバルに移動を楽しむ鉄オタだったからでしょうね)
是非、皆さんも一聴されることをお薦めします。
ドヴォルザークに関連した本や批評には、よくスラヴ、ボヘミアという言葉が出てきます。これをどちらも地域の名称と理解して、ドヴォルザークが2つの地域に関係していると思っている人がいらっしゃるかもしれませんが、実はこれは誤りです。
スラヴとボヘミアは各々異なる概念を意味する言葉で、スラヴはスラヴ語を話す民族グループを指し、ボヘミアはチェコ共和国西部の地域を指す歴史的な名称です。
従って、1841年にチェコ西部のプラハ近郊で生まれたドヴォルザークは、母国語がスラヴ語ですから、ボヘミア生まれのスラヴ人ということになるわけです。
ですから、ピアノ五重奏曲に使用されたスラヴ起源のドムカもボヘミア起源のフリアントも、一体となってドヴォルザークの体内に浸透しており、曲想に反映されたのでしょう。