横浜・音楽はじめて物語⑥〜横浜市歌〜

2008年に行われた「横浜開港150周年記念式市民アンケート」の中で、「横浜にちなんだ歌で好きな歌は」で圧倒的に1位であったのは、「ブルー・ライト・ヨコハマ」でした。この曲は、1969年いしだあゆみさんの歌でヒットし、150万枚を超えるミリオンセラーを記録したそうです。この歌を聴けば自然に歌詞が出てくるほど今でも広くなじんでいる歌ですから、1位になるのは納得できるのではないでしょうか。

しかし、2位「赤い靴」、3位「ヨコハマたそがれ」と続いて、4位に「横浜市歌」が入っているのにはびっくりです。それも5位の「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」を押しのけての堂々の4位です。一般的にこうしたアンケートで、公的な機関が定めた歌が上位に入ることなんて考えられないからです。(例えば、「日本にちなんだ歌で好きな歌は」と問われて、「君が代」と答えるようなものです)

早速、「横浜市歌」について調べてみました。

「横浜市歌」は、横浜開港50周年を記念して、1909年に制定されました。作詞が明治の文豪森鴎外であることが有名です。(ただし鴎外自身は横浜とは何の関係もなく、島根県出身ですが)

ここに、「横浜・音楽はじめて」がありました。

この「横浜市歌」は、制定された当時のままで現存する日本の市町村歌の中で最も古いもの、つまり現存する日本で初めての市歌と言われているのです。

正確に言うと、「京都市歌」の方が制定された年は早いのですが、以後全面改訂を繰り返し現在は1951年に制定された3代目となっていますので、制定以来今も変わらずそのままで歌い続けられている市歌では「横浜市歌」が最古となるのです。

確かに、文語調で格調高く歌い上げるところに、時代を感じます。普通であれば、敬して遠去ざけておくような歌なのですが、調査によると、横浜育ちの人であれば約86%が歌えると言われるほど浸透しているのが不思議です。その理由を考えてみましょう。

まずは、横浜市立の小・中義務教育での徹底した歌唱指導というのが挙げられます。朝会や音楽の授業で校歌と共に歌うのは勿論、入学式や運動会等々あらゆる行事で歌われるそうです。しかも普通は、トップダウンで強制されると嫌がるものですが、元気いっぱい楽しそうに歌っている様子が目につきます。その秘密は、森鴎外の文語調の歌詞にあるような気がしてなりません。

まず、『わが日の本は島国よ~中略~あらゆる国より船こそ通え』と大上段に、「日本は島国だから船での運輸が重要だ」とはじまり、『されば港の数多かれど この横浜にまさるあらめや』と続き、「横浜がどこよりも素晴らしい」と歌い上げています。歌っている方も聴いている方も、横浜プライドが自然と刷り込まれていきます。

どこの市歌でも自分の市を絶賛する歌詞が入っているでしょうが、「横浜市歌」の、口語調ではなく、難解でもない文語調の歌詞が絶妙に歌うたびに老若男女の心に響き、プライドをくすぐるようです。(こうしたプライドが積もりに積もって、横浜の人は出身地を聞かれると、絶対に「神奈川」とは言わず「横浜」と答えるのでしょうかね。冗談ですが)

また、トップダウンでの浸透に成功したうえで、ボトムアップでの活動も盛んに行われています。横浜に住んでいる皆さんなら、横浜市営地下鉄の接近チャイム、ゴミ収集車の接近メロディ、ベイスターズ、横浜F・マリノスの応援歌へのアレンジ等々、嫌でも毎日のように耳にしているはずです。

こうして「横浜市歌」はハマッコ達の共通のソウルソングとなり、前述したアンケートでも堂々4位になったのでしょう。

ちなみに「横浜ゆかりの有名人」アンケートで断トツの1位は「美空ひばり」さんでした。

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